車の維持費がどのくらいになるのか分からない方に、想定される維持費を正確なデータを元に算出。また維持費を抑えるためのコツも紹介します。
自動車の維持費の内訳
税金
自動車税
所有する車両には、毎年4月1日時点で自動車税がかかります。自動車税の金額は車種、排気量、用途、所有年数によって異なります。普通車の自動車税は排気量に基づいて変動しますが、軽自動車の場合、排気量が660cc以下であるため、排気量による税額の差はなく、一律です。普通車および小型自動車の自動車税は都道府県に納付し、軽自動車税は市区町村に納付します。
自動車重量税
自動車重量税は車両の重量に応じて課税される税金です。自家用車の新規登録時や車検時に、有効期間分の税金を一括して支払います。軽自動車の場合は車両の重量にかかわらず一定の金額が課税されます。車両が13年以上または18年以上経過した場合、税額が増加します。ただし、電気自動車(EV)やハイブリッド車などのエコカーには重課税はありません。
2019年10月1日以降に初めて登録された自家用車は、自動車税の税率が引き下げられる場合があります(軽自動車税には変更なし)。また、エコカー減税や環境性能割、グリーン化特例などの税額軽減措置を受けることができます。特にエコカーに関しては、2026年4月30日まで減税措置が適用されます。
保険料
「自賠責保険(強制保険)」と「自動車保険(任意保険)」
自動車を購入した際には、自動車保険への加入が必須です。自動車保険は、自動車による事故や損害が発生した場合に、保険会社が損害を保険金等で補償する制度です。自動車保険には、「自賠責保険(強制保険)」と「自動車保険(任意保険)」の2種類があります。
「自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)」は法律により、車の所有者が加入する義務が課せられています。この保険では、他人への慰謝料や治療費などの損害に対して補償されますが、自身の怪我や他人の車への損害には補償されません。自賠責保険は最低限の補償内容を提供するため、多くの人が「任意保険」にも同時に加入します。任意保険は保険内容によって保険料が異なりますが、自賠責保険ではカバーできない損害を補償します。
自賠責保険料も自動車重量税と同様に、車検の有効期限に合わせて2年分を一括して支払います。ただし、車検の時期と保険の有効期間がずれることがあるため、25ヵ月で加入するのが一般的です。
【自賠責保険料早見表】
24ヶ月 | 25ヶ月 | 36ヶ月 | 37ヶ月 | |
---|---|---|---|---|
自家用乗用自動車(普通車) | ¥17,650 | ¥18,160 | ¥23,690 | ¥24,190 |
検査対象軽自動車(軽自動車) | ¥17,540 | ¥18,040 | ¥23,520 | ¥24,010 |
参考資料:2023年1月届出の自賠責保険基準料率表|損害保険料率算出機構 (PDF)P6~P7
※2024年1月、金融庁が審議会を開き、2024年度の自賠責保険料はこれまでと同額に据え置くことを決めました。つまり2024年度も2023年度が適用されます。

車検費用
車検代
車検は道路運送車両法に基づく法定検査であり、新車購入から3年後に初回を受け、その後は2年ごとに定期点検を行う必要があります。車検費用は車の種類や状態、車検を実施する場所によって異なります。一般的な相場としては、ディーラーでの車検基本料が4万円から10万円程度、車検専門店では2万円から6万円程度、カー用品店では1万円から3万円程度となっています。
車検時に法定費用として自賠責保険料・重量税・印紙代も合わせて支払います。車検場によってはセットにして含まれていたり、法定費用を含まなかったりするので都度チェックが必要です。
印紙代
車検を行う際の手数料は、現金ではなく印紙もしくは証紙によって納付するように法律で定められています。車検を行う場所が指定工場か認証工場かによって、印紙代が異なります。
指定工場は、車検ラインを工場内に持ち、地方運輸局長の指定を受けている工場です。一方、認証工場は、地方運輸局長の認証を受けた整備工場であり、分解整備は行えますが、車検を工場内で実施することはできません。認証工場で車検を依頼した場合は、工場内で整備を行った後、車を車検場に持ち込んで検査を実施する流れになります。
【普通・小型・軽自動車にかかる印紙代】
自動車の種別 | 納付先・金額 | |||
---|---|---|---|---|
国 (検査登録印紙) | 機関 (自動車審査証紙) | 合計 | ||
指定工場 | 普通自動車 | ¥1,400 (OSS*1)¥1,200 | ¥400 | ¥1,800 (OSS)¥1,600 |
小型自動車 | ¥1,400 | ¥400 | ¥1,800 | |
軽自動車 | ¥1,400 | ¥400 | ¥1,800 | |
認証工場 | 普通自動車 | ¥500 | ¥1,800 | ¥2,300 |
小型自動車 | ¥500 | ¥1,700 | ¥2,200 | |
軽自動車 | ¥1,800 | ¥400 | ¥2,200 |
参考資料:令和5年1月1日以降の自動車検査手続きに関する手数料一覧(PDF)
*1:OSS(Online Self-Service)は、自動車の保有関連手続きを一括して行うワンストップサービスのことです。自動車を所有するためには、さまざまな手続きや税金・手数料の支払いが必要であり、そのためには多くの時間と手間がかかります。OSSは、これらの手続きをインターネット上で一括して行うことを可能にし、利便性を高めるサービスです。
詳細はこちら→国土交通省より新しい自動車登録方式 – ワンストップサービス新しい自動車登録方式 – ワンストップサービス(PDF)
修理代・洗車代
車が故障した時の修理代やタイヤ、オイルなどの消耗品の交換にも都度お金がかかります。オイル交換は走行距離にもよりますが半年に1度行うのが一般的です。洗車は月に1度か2度を目安に、時間があれば自分で洗車するのも良いでしょう。
ガソリン代
ガソリン代は走行量や燃費性能、ガソリンの相場によって変動します。例えば、普通車の場合、燃費が20km/Lで月間400kmを走ると仮定すると、ガソリン代は176円/Lとして、1ヵ月の燃料費は¥3,520、年間で¥42,240かかります。
ハイオクの場合、ガソリン価格がレギュラーガソリンよりも10円程度高いため、燃料費はより高額になります。
駐車場代
駐車場代は場所や地域によって大きく異なり、個人差があります。そのため、支出を把握するためには毎月のチェックが必要です。
月極駐車場を借りる場合、毎月数千円から数万円の駐車場代が必要になります。さらに、敷金や礼金、更新料などの支払いも必要となる場合があります。
自動車年間維持費の目安表【4車種で比較】
軽自動車 | 小型自動車 (5ナンバー) | 普通車 (3ナンバー) | 普通車 (3ナンバー) | ||
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ダイハツタント (2WDカスタムRS) | トヨタヤリス (ガソリン車1.0L CVT・2WD) | マツダCX-60 (25S SPackage 2WD) | ホンダオデッセイ (ガソリン車2WD) | ||
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自動車税・軽自動車税(1年分) | ¥10,800 | ¥25,000 | ¥43,500 | ¥43,500 | |
車検費用 | 重量税(2年分) | ¥6,600 | ¥16,400 | ¥32,800 | ¥32,800 |
自賠責保険(25ヶ月) | ¥18,040 | ¥18,160 | ¥18,160 | ¥18,160 | |
印紙税(2年分) | ¥1,800 | ¥1,800 | ¥1,800 | ¥1,800 | |
車検基本料(2年分) | ¥38,142*1 | ¥44,000*2 | ¥69,500*3 | ¥52,350*4 | |
*5 | 自動車保険料(1年分)¥50,065 | ¥56,198 | ¥73,405 | ¥73,405 | |
*6 | オイル交換(1年分)¥8,862 | ¥8,862 | ¥8,862 | ¥8,862 | |
*7 | 洗車代(1年分)¥11,472 | ¥11,472 | ¥11,472 | ¥11,472 | |
*8 | ガソリン代(1年分)¥40,228 | ¥42,240 | ¥60,342 | ¥70,400 | |
*9 | 駐車場代(1年分)¥117,828 | ¥117,828 | ¥117,828 | ¥117,828 | |
年間維持費の目安 | ¥271,546 | ¥301,780 | ¥376,539 | ¥378,022 | |
月間維持費の目安 | ¥22,629 | ¥25,148 | ¥31,378 | ¥31,501 |
※自動車税や軽自動車税のグリーン化特例は無視し、2019年10月以降に初めて登録された場合を前提にしています。自動車重量税のエコカー減税についても、考慮していません。
4車種は以下の主要諸元表を参考にしています。
ダイハツタント(2WD カスタムRS):https://www.daihatsu.co.jp/lineup/tanto/pdf/specifications.pdf(PDF)
トヨタヤリス(ガソリン車1.0LCVT 2WD):https://toyota.jp/pages/contents/yaris/001_p_001/pdf/spec/yaris_spec_201912.pdf(PDF)
マツダCX-60(25S SPackage 2WD):https://www.mazda.co.jp/globalassets/assets/cars/cx-60/common/pdf/cx-60_specification_202307.pdf(PDF)
ホンダオデッセイ(ガソリン車2WD):https://www.honda.co.jp/factbook/auto/ODYSSEY/201310/p29.pdf(PDF)
*1:滋賀ダイハツ販売での価格を参考。
*2:ネッツトヨタ北九州での価格を参考。
*3:九州マツダ マツダジャストフィット車検 ラージクラスを参考。
*4:ホンダカーズ兵庫での価格を参考。
*5:任意自動車保険用途車種別統計表2021年度(PDF)より算出。「軽四輪自動車の乗用車」「自家用乗用車小型」「自家用乗用車普通」の契約保険料を台数で割った平均を使用。
*6:e-Stat政府統計の総合窓口より「銘柄7341自動車オイル交換料」の2024年1月の平均価格¥4,431を使用。年2回交換を想定。
*7:e-Stat政府統計の総合窓口より「銘柄7347洗車代」2024年1月の平均¥956を使用。月1回の洗車を想定。
*8:e-Stat政府統計の総合窓口より「銘柄7301ガゾリン」の2024年1月の全国平均¥176/Lのもと月間400km走行する前提で算出。WLTCモードカタログ燃費で計算。タント21km/l、ヤリス20km/L、マツダCX-60:14km/L、ホンダオデッセイ12km/Lで計算。
*9:e-Stat政府統計の総合窓口家計調査 家計収支編より「銘柄75X年極・月極駐車場借料」の2023年の平均価格¥9,819で計算。
車の維持費を節約する方法
軽自動車やエコカーを購入する
燃費や車検代、保険料などを考慮すると、普通自動車よりも軽自動車の方が全体的に維持費が安くなる傾向があります。そのため、軽自動車を所有することで維持費を抑えることができる一つの方法と言えます。
定期的なメンテナンスを行う
突発的な出費を抑えるためには、定期的なメンテナンスが重要です。洗車の際に車の状態をチェックするよう心がけましょう。日常的なメンテナンスは大きな故障を予防し、安全性を確保するだけでなく、車検費用を削減し節約する可能性もあります。
ワイパーやタイヤ、エアコンフィルター、ウィンドウウォッシャー、バッテリー、エンジンオイルなど、定期的に交換が必要な部品の点検も忘れずに行いましょう。
古い車は乗り換えを検討する
古い車は燃費が悪くなり、その結果ガソリン代が増加します。また、環境に配慮されない古い車には自動車税が重課されるため、維持費がますます高くなります。新規登録から13年(ハイブリッド車を除く/ディーゼル車は11年)が経過すると、自動車税は約15%の増税となり、軽自動車税も約20%の増税となります。このため、古い車を所有しているだけで維持費が増加してしまいます。13年が経過する前に車の買い替えを検討することが重要です。
カーシェアリングを使う
自家用車を購入したものの、乗る機会が少なく駐車場代などが負担となる場合は、思い切って車を手放すことも一つの選択肢です。近年はカーシェアリングなど、必要な時に車を利用できる便利なサービスも増えていますので、検討してみるのも手です。また、車検やメンテナンスなどの料金が含まれたカーリース契約をすることも、車の維持費を節約する手段の一つです。
余裕がある場合は現金で車を購入する
ガソリン代などの走行費や駐車場代などは毎月かかります。また、車の購入時にローンを組んでいる場合、ローン返済も毎月の支出に加わり、家計への負担が増大します。支出を減らし家計への負担を軽減するためには、現金で車を購入することが有効です。現金での一括購入が難しい場合でも、一部を現金で支払うことで、毎月の負担を削減できます。
低金利のマイカーローンを組む
月々の支出を考慮すると、車を現金で購入するのが理想ですが、実際には購入時にローンを組むことが一般的です。ローンを組む場合は、金利の低い金融機関を選んで返済額を抑えることが重要です。マイカーローンは銀行や金融機関、ディーラーなどで契約できますが、金利や手数料を考慮すると銀行などの金融機関がお勧めです。
ガソリンを安く入れる
ガソリン代の節約には、ガソリン代の割引やポイント還元が受けられるクレジットカードを利用したり、ガソリンスタンドのアプリを使用してガソリンを安く入れたりすることが有効です。さらに、フルサービスのガソリンスタンドよりも、セルフ式のスタンドの方が3〜5円程度ガソリン代が安い傾向があります。これらの方法を活用することで、車の維持費を節約することができます。
自分で洗車をする
時間に余裕がある時は自分で洗車するのもコストを抑える一つの方法です。月¥1,000〜¥2,000近くの節約になると考えると自分でした方がお得ですし軽い運動にもなるので一石二鳥です。
まとめ
車両費などの初期費用だけでなく、自動車は継続して様々な維持費がかかります。維持費の総額は年間で見ると思いのほか高額なため、家計の状況によっては維持費の安さも車選びのポイントの1つとなります。
これから車を購入する場合は、車両費だけでなく、車の維持費も含めたトータルコストを算出して検討するのが賢明な選択です。自分の利用目的やライフスタイルに合い、経済的にも負担にならない車を選ぶことが重要です。